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Beauty Source キレイの魔法

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ふたりのマダム・ジリー

「ふたりのマダム・ジリー」

ルイーズ・ガルニエ・ジリー 妹 オペラ座ボックス案内人 シャルル・ガルニエの妻 マドレーヌの母
クレア・ジリー 姉 オペラ座のバレエ指導者 メグ・ジリーの母 

妹 エリックの注文は、赤い薔薇にビロードの黒リボン、新色のクレパスに大判のスケッチ帳三冊。
  三冊もどうなさるおつもりかしら?
  薔薇はまた、若いご婦人に?今度はどなた?

姉 あなたが詮索することではないわ、ルイーズ。

妹 あら、一時は恋仲でもあったんですもの、今はよき友人として、
  エリックのいまの恋人の名前くらい知っていてもかまわないでしょう?

姉 オペラ座建設で忙しいガルニエの目を霞めてね。
  仕事仲間でもあったあの方に近づくなんて。

妹 シャルルがオペラ座に心血を注ぐことができたのは、エリックの助力あってこそ。
  ほとんど毎日通っているけれど、時どきこの芸術が、シャルルの作品なのだか
  エリックのものなのだか、近くで見守り続けてきた私にもわからなくなるの。
  二人はまるで一心同体。時どき妻である私の嫉妬心を起こさせるほどに。
  エリックのためになることは、シャルルのためでもあったのよ。

姉 もちろん、花のパリで夫以外の恋人を持つな、なんて野暮なことは言わないけれど。

妹 わかってくださったのならいいわ、お姉さま。
  それで、エリックがご執心なのは、また美しい高級娼婦?それともコーラスガール?

姉 コーラスガールの方。

妹 いつぞやのマルグリットのように、どこぞの青年に見初められたのを阻止するべく
  田舎の父親に告発状を送りつけたりしているの?

姉 身寄りがないのよ、彼女は。

妹 まあ、相手はもしかしてクリスティーヌ?あんな魅力のない子をどうして?

姉 そうでもないわ。あの方の指導で、かなり高音域の表現が上手くなって。

妹 確かに彼に歌唱を教えてもらって、晩餐会で面目を施した伯爵夫人もいたわね。
  単なる余興に過ぎないと思っていたら、素晴らしい出来映えで。
  紹介した私も、たっぷりお礼をいただいたわ。エメラルドの指輪も。
  すぐにマドレーヌの学費に替わってしまったけれど。

姉 あなたも苦労するわね。ガルニエが元気なら、ボックス案内人なんてしなくても済んだのに。

妹 いいえ、私は幸せよ。
  ふたりの思い人の作品の中にいるんですものね。
  毎日、エリックの注文、開場1時間前までにボックスVに届けるわ。

姉 ああ、いつものように煙草も忘れないで。

妹 心得ていますわ。いったいあんなに煙草を吸って、あの声が出せるなんて、本当に不思議。

姉 それが、あの方が天にも昇る声で歌える秘訣よ。


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